ストーリー
クレジットカードの発行や、銀行からお金を借りることが出来ないほど苦しい立場にいる自営業者などのもとに不特定多数の男が現れ、その男は相手が目の前に置いた札束の金額を2倍にして帰っていくという事案が発生し、その謎を突き止める所から事件が始まります。その過程で、15歳のマジシャン、里見沙希という女性も捜査に協力し、マジックの知恵を警察に提供します。
この作品の事件では、「マジック」が重要なキーとなります。
最後も衝撃のどんでん返しが出ます。
マジックについて読む前に比べて理解度が上がった
この作品を通じて、マジックとシルクハットの中から鳩を出したりするようなことだけでなく、言葉もまたマジックのタネだと思いました。
マジックはただ仕掛けを用意するだけのものではなく、言葉のひっかけで人に先入観を植え付け、欺くというやり方や、周りの視線が一点に集中している時にその隙を盗んでやる手法もあるんだなと感心しました。例えば「夜、火のついた5本の蝋燭が置かれていて、そのうちの3本が風が吹いた影響で消え、翌日になって残った蝋燭の数は何個か?」という問題。私は「3本は火が消え、2本は溶けて無くなったから0本」と思ったのですが、よく問題を読むと、火がついた蝋燭の数ではなく、溶けずに残っている蝋燭の数を言っています。私はてっきり火が付いた蝋燭の数を問うているのだと思いこんでいたので見事に引っ掛かりました。
この本を読んでマジックのことが少し分かりました。ただタネは絶対に知りたくないと思っています。この本でもマジックのタネは決して明かしてはいけないものだと書いてありますし、それに一般の人はタネが分からないからこそマジシャンは魔法使いのように認識し、見に来る人がいっぱいいるのだと思うので。
読んでいると内容がリアルに思ってしまう
それにしても、松岡圭祐氏の推理小説は思わずリアリティを感じてしまいます。「水鏡推理」を読んだ時も本当に国家公務員なんじゃないか?と思いましたが、こちらの作品も読んでいてこの人、本当に警察官なんじゃないか?と思うくらい綿密な文章なのでこんな作品どうやって作っているのか、知りたくなってきます。公務員の情報は機密事項ばかりなのに。かなり踏み込んだ取材をしているのでしょうか?そう思ってしまいます。
今回のお話は以上です。次回もまたよろしくお願い致します。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。